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地裁判例【建物老朽化(耐震性能不足)による建物明渡請求・2件】

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建物老朽化(耐震性能不足)による賃貸人からの建物明渡請求の判例が2件でています。
(判例1)は昭和41年新築、(判例2)は昭和21年新築のいずれも古いビルでの飲食店営業の賃貸借に関する事例ですが、賃貸人の明渡請求に対し,
(判例1)請求棄却
(判例2)120万円の立退料支払と引換えに,請求を認めた
として,判決の結論が分かれています。

(判例1)

事件名 建物明渡請求事件
裁判年月日 平成25年12月24日
裁判所名 東京地裁
裁判区分 判決
事件番号 平23(ワ)13905号
裁判結果  棄却
上訴等  控訴
事案の概要 本件は,賃貸人である原告が,賃借人(レストラン経営)である被告に対し,更新拒絶をする正当の事由がある(建物が耐震性能に欠けるため,取壊しの必要がある)と主張して,賃貸借契約の終了に基づき,建物の明渡しを求めた事案である。
◆主文(抜粋)はこちら → H251224_建物明渡請求事件

出典 判時2216号76頁、ウエストロー・ジャパン

(判例2)

事件名 建物明渡請求事件
裁判年月日 平成25年11月13日
裁判所名 東京地裁
裁判区分 判決
事件番号 平23(ワ)11961号
事案の概要等 本件は,原告(賃貸人)らが,被告(賃借人:中華料理店経営)らに対し,原告らと被告ら間の賃貸借契約の終了に基づき,本件建物の明渡しと1か月当たり原告X1において6万6667円,原告X2において1万3333円の割合による賃料相当損害金の支払を求めた事案である。
◆主文(抜粋)はこちら → H251113建物明渡請求事件

出典 ウエストロー・ジャパン

POINT渡辺先生から一言

正当事由の存否は,建物の使用についての,賃貸人の必要性と賃借人の必要性を比較して判断するというのが,基本的な枠組みです。建物の状況と取り壊し後の計画などが勘案され,(判例1)と(判例2)では,異なる結論となっています。

(判例1)東京地裁平成25年12月24日判決は,賃借人が40年以上レストランを経営し,かつ引き続いて経営する意思があるというのに対し,賃貸人の側では,耐震性の観点からただちにビルを取り壊す必要があると主張し,取り壊し後は駐車場にするというだけで,取り壊し後の具体的な計画を示していないという事案です。裁判所は,具体的に計画を立てていることを裏付け得るような証拠の提出がない,耐震性能の問題点をもって取壊しが必須の急務であるということはできない,として,正当事由を否定しました。

(判例2)東京地裁平成25年11月13日判決は,賃借人が昭和42年ころ以降中華料理店を経営している賃貸借(現在の月額賃料は8万円)です。建物の状態としては,基礎部分の性状に問題のあって相当に危険な状態にあるというほかなく,修復による存続よりも建て替えを行う必要性が大きい,また,取り壊し後の計画についても,隣接建物と接着するように建築されている本件建物を併せて再築することに合理性も十分に認められるとして,立退料120万円の支払いとの引換えで,正当事由に基づく明渡請求を肯定しました。

飲食店の賃貸借では,正当事由が認められるにしても多額の立退料支払を求められるケースが多いのですが,判例2における立退料が月額賃料の15か月分にすぎなかった点も,注目できると思います。
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