講師/弁護士 寺村温雄 氏
ビル経営をめぐる状況はきびしく、さまざまな法律トラブルが多発している。当センターでは2002年7月のセミナーに寺村温雄弁護士をお招きし、テナントの誘致から入居、契約更新、退去までの間に起こるさまざまなトラブルに対してどう対処すべきか、また、危機管理の視点から、トラブルを未然に回避し、安心してビル経営にあたるためのノウハウを、具体的事例をもとに解説していただいた。前号に引き続き後編をお届けする。
現在入居中のテナントの倒産という事態が起きることがありますが、ビルオーナーあるいはビル管理者にとって重要なことは、テナント倒産の予兆をどう察知して迅速に処理できるか、ということであります。まず予兆として、テナントからの賃料の入金がしばしば遅れる、以前はきちんと入金していたのに途切れ途切れに入ってくる、あるいは何カ月間か遅れ遅れの状態がずっと続いている。断続的には入るのだけれども、数カ月分の延滞を引きずりながら現在まで推移してきている。こういうようなケースが多くなります。
この場合に貸主としてまず考えるべき点は、具体的な方針を立てないままでしばらく様子を見るという態度をずるずると続けるのではなく、テナントから差し入れられている敷金あるいは保証金でもって、滞納賃料をカバーできるぎりぎりの時点はいつかということを見極めることです。
例えば賃料10カ月分の敷金が入っているとすれば、1カ月、2カ月の滞納であれば、まだ様子を見る余裕があります。ところが数カ月ぐらい滞納が続けば、決断をする必要があります。仮に契約を解除して明渡しを求めて、明渡しが完了するまでにどのぐらいの時間がかかるのか、また明渡しと原状回復の費用を貸主が負担するとすればどのぐらいの費用がかかるのか、ということを見越して、あるタイミングで契約の解除通知を出す必要があります。原状回復費用だって、本来はテナントが負担するべき費用ですが、賃料を滞納するようなテナントであれば、原状回復をきっちりやってくれるはずもありません。そして契約解除、明渡しの方向に動き出さないと、実質的に敷金、保証金を食いつぶしたあともずるずるとテナントがそのまま居座っているという状態が続いてしまう結果になります。
そうなるとその保証金、敷金でカバーされる範囲、それからその後発生する手順が問題となります。まず賃料の不払いを理由に契約の解除をする場合では、賃料不払いが2〜3カ月続けば、契約解除の有効性は認められます。賃料1カ月分の滞納で直ちに契約を解除してしまうと、権利濫用で契約解除が無効だとされるケースは多いんですけども、2〜3カ月の滞納が続けば契約を解除しても法的には問題ないと思います。完全に手形不渡りを出して営業を停止した場合などは、今後の入金の見込みがないということがいうのがはっきりしていますから、2カ月程度の不払いが続けば、解除しても法的には認められると思います。
ただ厄介なのは、賃料の一部が入金されたり入金されなかったりという状態が、2カ月続いているというような場合は微妙です。月額50万円の賃料のうち先月は30万円だけ入金した、今月は20万円だけ入金した、こういう状態が続いている、テナントはまだ営業を続けているという場合は、完全に賃料の支払いが停止したというわけではないので、賃貸借契約を解除する段階にいたってないと判断せざるを得ません。
賃貸借契約を解除するという方針を決定するに当たっては、契約解除が有効かどうかという点だけを判断すればよい、というものではありません。契約解除の通知文書は内容証明郵便で出せば済むことですが、契約の解除通知を出してから実際に明渡しをさせるまで、どれぐらいの時間とどれぐらいの費用がかかるのか、を見通すのが非常に難しいことです。
テナントが自発的に明渡しをしてくれるのが望ましい形ですし、極力その方向に持っていかないと契約の解除をしたあと、法的手段をとって明渡しをさせるということになりますと、かなりの時間と費用がかかります。
例えば家賃不払いで契約を解除するという場合、通常テナント側が法的に争う余地はありませんから、裁判手続き自体は2〜3カ月で判決が言い渡されると思います。ただそのあと、明渡しの強制執行までするというのは、費用と時間がかなりかかります。
ビルの1室を借りているテナント、せいぜい20〜30坪のフロアのテナントを明渡しの強制執行をするという場合であっても、強制執行の手続きは、まず裁判所に強制執行の申立てをします。そして強制執行を担当する執行官が現地に赴いて明け渡すように催告します。それでも自発的に出ない場合は、本当に明渡しのために必要な作業をする補助者を動員して物理的に強制執行で明渡しをします。そのためには、貸室の中に置かれているテナントの備品を別の保管場所に移す必要があるので、その保管場所を用意し、それから実際の強制執行のために、執行官の補助者として明渡しの作業をする人員を確保する必要があります。それらの費用を考えると、20〜30坪程度のビルの1室の明渡しをするのに200〜300万円の費用がかかってしまうこともあります。
ということで、残念ながら強制執行といっても費用の面とか時間の面ですんなりできないことになります。結局、強制執行をするぞという圧力を掛けながら、立退料を支払ってでも自発的に明渡しをさせたほうが結局、早く安あがりになることが多いようです。だから明渡しの強制執行をするというのは、実はかなり大変なことです。
そうはいっても、みすみす賃料の支払いもないままで放置していれば、貸主側の損害が発生するばかりなので、まず契約の解除のタイミングを見極めること、そしてその後の手続きを速やかに進めることが重要です。

テナントが倒産という事態になった場合に、その後の倒産処理がどういう手順で進むのかによって貸主側の対応も異なってきます。
法的な整理の方法としては、会社更生、民事再生、破産などの方法があります。会社更生、民事再生というのは、いずれも裁判所の監督のもとに倒産企業の存続、再建を前提とした手続きですので、その企業と賃貸借関係についても営業の拠点であるとか、重要な拠点である場合は賃料の支払いを継続したうえで賃貸借契約の継続も求めてくることが多いようです。
倒産当初は、裁判所から保全管理人が選任され、正式に手続きが始まる段階になると管財人が選任されますので、交渉して賃貸借契約を継続することが可能です。ビルオーナー側の債権も、手続き開始後に関しては財団債権と認められ、企業の再建を図るうえで事業の拠点を確保するために家賃の支払いを受けられますから、会社更生、民事再生の手続きが進められていれば、貸主としてもある意味で安心ということになります。
これに対して、テナントが破産ということであれば、その企業を清算して事業を廃止し、そして現有の資産を債権者に配当するという手続きですから、裁判所から選任されたな破産管財人と交渉して速やかに賃貸借契約を解除し、明け渡しについても破産管財人に責任を持って明け渡しをしてもらうことになります。原状回復についても、破産管財人ができない場合には貸主が行い、その費用分を保証金、敷金から控除するというような方法を取りうると思います。
いずれにしても何らかの法的な倒産処理が進められればビルオーナーも対応が可能です。
ところで、実務上はこういった法的な処理方法のほかに、任意整理と称する裁判所が関与しないで整理が行われるケースがあります。任意整理のなかでも、弁護士が倒産したテナントの代理人として整理をするというケースもありますが、そうでないケースもあります。任意整理でもまともな弁護士がついてちゃんとやってくれればいいのですが、往々にしていわゆる「整理屋」「占拠屋」と称される怖い筋の人がテナントに乗り込んで事務所を占拠する、というケースもあります。
こういう整理屋というのは、倒産した会社に債権者として乗り込んできて何をするかというと、会社の資産でめぼしいものは全部回収して自分の懐に入れてしまうというようなことをやるわけで、決してまともなことはやりません。一般の善良な債権者が手を出したりしないように、怖い筋の者をその事務所に寝泊りさせたり、怖そうな看板をビルの入り口に立てたり、という行動をとります。このように、テナントとの連絡もとれない状態で、怪しげな債権者風の者が出入りしているというような状態になってくると、これはビルのオーナーも普通の相手ではないだけに要注意です。
その場合は弁護士に依頼し、占拠屋を排除するための法的手続きをすることになります。その場合、誰を相手に明け渡しを求める訴訟を起こすのかということが問題になってきます。正式な裁判をする前に仮処分という申立てをして、誰がそこを占拠しているかということを法的に確定することが必要です。
このように整理屋、占拠屋が乗り込んで、倒産したテナントの部屋を占拠するというケースが生じた場合には、直ちに弁護士に依頼して仮処分の手続きをとって、そして法的手続きでもって明渡しをさせていく、という方法をとるしかありません。貸主としても、放置したり、安易に自分で交渉したりしないで、弁護士に任せるしかないだろうと思います。

テナントが倒産した場合、まず倒産した企業あるいは個人にどういう財産があるかということを調べます。その財産を調べて、差し押さえて回収できる財産がないかということを調べます。ただ、テナントが所有している不動産を差し押さえても貸主の債権を回収するのは難しいといえます。通常、担保もいっぱい入っているし、不動産を売るまでに時間がかかる。だから不動産をターゲットにして債権者が差し押さえるというのは、債権回収の手段としてはあまり効果的とはいえません。
また、テナントの銀行預金を押さえても、倒産するような会社はすでに銀行から相当借入れをしていますし、銀行が貸付金と預金を相殺することも多く、効果的ではありません。売掛金があれば売掛金を押さえるという方法もありますが、ただ、どこに対してどれだけの売掛金があるかということを、債権者がつかむのがなかなか難しいという面があります。

一般に、あるビルのテナントとして倒産した会社が入っているという場合には、債権者は、債務者であるテナント企業は入居するに当たって保証金を差し入れているはずだ、という判断のもとで、保証金の返還請求権を差し押さえるということを9M$($^$9!#$=$N>l9g$K!"%S%k%*!<%J!<$KBP$7$F:[H==j$+$i$NJ]>Z6bJV4T@A5a8"$KBP$9$k:92!$(DLCN$,%S%k$N%*!<%J!<$K$/$k$3$H$K$J$j$^$9!#$J$<%S%k%*!<%J!<$K:92!$(DLCN$,$/$k$+$H$$$$$^$9$H!"%S%k%*!<%J!<$OB_<<$NB_Z6b$NJV4T:DL3$H$$$&:DL3$rIi$C$F$$$k:DL3l!"$9$J$o$A!"!VBh;0:DL3l$+$i$9$k$H!"%F%J%s%H$KBP$9$kB>$N:D8"o$K?430$J$s$G$9$1$l$I$b!"$?$^$?$^%F%J%s%H$KBP$9$k:DL3$,$"$k$H$$$&0UL#$G!"Bh;0$N:DL3
そして、差押え通知がきた場合には、ビルオーナーは差押え通知書に表示された債務があるかどうかということを回答しなければなりません。保証金の返還債務があるかどうか、その金額はいくらか、返還する意思があるかどうか等について「ある」とか「なし」とかということを書いて回答するということになります。
その場合には、当然家賃の滞納がある場合には、滞納している分と相殺するということを回答書に記載しなければなりません。相殺して残高があれば返還するし、そしてもう残高がなければ返還しないということを回答するということになります。法的な差押えという形でくれば、そういう回答をしてあとで相殺の手続き、相殺の処理をすればいいわけです。差押え通知$,$-$?$+$i$H$$$C$FI]$,$kI,MW$O$"$j$^$;$s!#$?$@!"2sEzFbMF$K5u56$,$"$l$PK!E*$J@UG$$,H/@8$7$^$9$+$i!"@53N$K5-:\$9$k$3$H$,I,MW$G$9!#
また、テナントが倒産する場合に「債権を譲渡する」という通知がテナント側からビルオーナーに届くことがあります。これはビルオーナーだけの問題ではなく、ある会社が倒産した場合に、その会社から商品を購入して買掛金のある取引先にも債権譲渡の通知が届くことがよくあります。
なぜそういう債権譲渡というのが行われるのかというと、一般に債権譲渡の通知を出して債権を回収しようとするのは、比較的金融業者が多いのですが、金融業者が融資をする際に、将来返済できない場合には、すぐ債権譲渡通知を出せるように、あらかじめ内容証明郵便の用紙に融資先の記名押捺をさせておき、いざ不渡り、倒産という事態になったときに、すぐそれを発送して債権を回収するということが行われているからです。
そして、債権譲渡通知が届くとともに、債権を譲り受けたと称し、「自分が債権を譲り受けたから保証金は自分のほうに払ってくれ」ということを督促してくる債権者が現れることがあります。
こういうケースについての対応策についてですが、まず、ビルオーナー側は、滞納賃料などの債権があれば保証金と相殺することです。相殺により返還すべき保証金・敷金がなければ、債権を譲り受けたと称する者に対してもすでに債務はないことを根拠に、請求を拒否することができます。保証金・敷金の返還債務が残っているとしても、その支払時期は貸室の明渡し完了後ですから、明渡し完了までは「期限未到来」を根拠に請求を拒否することができます。
そして、このような事態をあらかじめ回避する策としては、敷金とか保証金を他に債権譲渡してはならないということを、契約書条項に記載しておくことです。この条項を「譲渡禁止特約条項」といいます。これは一般に保証金とか敷金は、自由に債権譲渡できるのが原則ですが、この譲渡禁止特約があれば特約に違反する債権譲渡は無効となります。
したがって、この債権譲渡禁止条項に違反していることを根拠として、債権を譲り受けたと称する債権者の請求を拒否することができます。ただし、債権譲渡特約を付けているからといって、そういった特約があることを知らない善意の第三者には対抗できないとされています。債権譲渡を受けたと称する者も、そんな特約があるということは知らないというでしょう。「そんなの知らないよ。だから自分のほうに払え」と、こう言ってくるケースが多いと思います。この場合には、債権の譲受人が債権譲渡禁止特約の存在について善意(知らない)か、悪意(知っている)かはビルオーナーが知りうることではありませんから、返還債務があったとすれば供託することによって免責されます。この供託という方法を取ることによって、しつこい請求から逃れることができますし、万一しつこい請求に負けて支払ってしまった場合に、その債権譲渡が後に無効となった場合に起こりうる二重払いのリスクを回避することができます。
いずれについてもこういう請求に対しては、しつこく言ってきたとしても一切相手にしない、書面できっちり回答するという対応が賢明です。しつこく面会を強要するということがあるならば、弁護士に依頼をして面会の強要をさせない、あるいは取り立てをさせない手段を講ずることができます。
このように、テナントが倒産した場合には、ビルオーナーは、ひとつはテナントに対する債権者の立場で賃料債権の回収をどうするかという観点で対応する必要があり、他方、テナントに対する債務者として、保証金・敷金の返還債務を負担するという立場で、テナントに対する他の債権者への対応を求められるという両面があります。ビルオーナーはテナントに対する債権者であると同時に債務者でもあり得るということですね。
いずれにしてもテナントが倒産した場合に、ビルオーナーの損害が全く発生しないというケースはあまりないわけです。何らかの痛手を負うというケースが多いわけです。テナントを入れるということは、こういうリスクを抱えるということでもありますので、その危険性をあらかじめ認識しておく必要があります。そういう意味では、ビルオーナーにとっても入居させるテナントを選ぶというのは重要な意味を持ってくると思います。

賃借権の譲渡・転貸に伴うトラブルは、特に用途が店舗であるテナントの場合に多いトラブルです。民法上、賃借権の譲渡・転貸は貸主の承諾がないとできないことになっておりますし、ほとんどすべての賃貸借契約書には貸主の承諾なくしてテナントは賃借権を他に譲渡したり転貸することができない、という条項になっています。しかし実際には譲渡・転貸が行われています。それをビルオーナー側が見抜くのが非常に難しい、という傾向にあります。
例えば、店舗の場合によくあることですけれども、実際には譲渡されているにもかかわらず、従前のテナントの名義で賃料が払われてくる、ビル管理人が調査に行けば、これまでのテナントとは別の人が経営しているようであるが、店長だとか使用人だとかいって譲渡・転貸を認めないとか、経営委託を受けたと称するものの譲渡・転貸を認めない、ということが起きてきます。転借人の名で賃料を送金すれば、ビルオーナーに転貸がばれてしまうということで、経営委託という口実が使われます。テナントが第三者にその経営を委託しているだけで転貸ではないという訳です。
私がビルオーナーの代理人として担当した事件でも、賃借人側は経営委託だから転貸ではないという理由で争ってきたケースがありました。賃借人側は経営委託契約という契約書を証拠として出して、経営委託を受けて店長になっているという証人が出頭したんですが、証人尋問で経営委託について金銭的条件を聞かれると「それは、委託を受ける方がテナントに対して毎月いくらというお金を払っている。その代わり売上げは委託を受けている店長が管理している」と証言しました。自分の売上げとして懐に入れているのかと聞かれると「そうだ」と証言するのです。それならば結局家賃を払っているのと同じだということになって、判決でも「経営委託という名目で、実質的には転貸である」ということが認定され、無断転貸だということで契約の解除が認められたというケースがあります。
だから表向き経営委託であっても、金の動きなどをきっちり追跡すれば、無断譲渡あるいは無断転貸であるということは明らかになることではあるのですが、雑居ビルなどでさまざまなテナントが多数入っているビルの場合には、なかなかその管理が行き届かず、ビルオーナーが現実の使用状況、経営状況を把握できず、結果的に無断譲渡・転貸が見逃されているケースも多いわけです。毎月の賃料の振込み状況だけの管理では、このようなことが行われている場合もあります。しかし貸主とすれば、家賃だけ入れば誰が入居していてもいいというものではないわけで、テナントの使用状況についての情報を把握して管理できる体制をとっておく必要があります。
賃借権の譲渡・転貸の事実が明らかになった場合、ビルオーナーの対応策としては、無断譲渡・転貸を理由に賃貸借契約を解除してテナントに明渡しを求めるということになります。ただし、無断譲渡・転貸を理由とする契約解除については、ただ単に無断譲渡・転貸が行われているというだけで直ちに契約の解除ができるというものではなくして、背信性があるかどうか、すなわち、貸主と借主の間の信頼関係が破綻しているかどうかということが争点になってきますので、譲渡・転貸の程度、態様も問題になってきます。
無断譲渡・転貸されていた期間とか、現実に譲渡・転貸を受けて入居したのがどういう人であるか、その理由は何か、それによって建物の使用状況がどういうふうに変わってきているのか、それによって建物所有権および貸主としての権利にどのような被害が生じているのか、貸主側がその事実を知って放置していた事実はないのか、というようなことが総合的に判断され、無断譲渡・転貸に背信性があると認められる場合に、契約解除が認められることになります。背信的かどうかということは必ずしも明確な客観的基準ではないので、それは個々具体的な事情により結論が分かれることになります。

貸室の修繕がいったい貸主・借主のどっちの責任か、それについて特約でカバーできるのかということについては、基本的に修繕義務は貸主にあります。民法606条で修繕義務は貸主にあるとされ、貸主は修繕をしたうえで借主に使用収益させる責任があることになります。したがって、建物が不可抗力で破損したような場合でも、貸主側が修繕する義務があります。
そして、この修繕義務についての特約をどうするかに関しては制限がありませんので、原則として当事者間の特約で自由に内容を決めることができます。一般にテナントとの契約においては、この修繕に関する特約はかなり利用されていると思います。
テナント側に修繕義務を課する特約がある場合、テナント側が具体的にどの程度まで修繕義務を負うかが問題になります。テナント側の義務の範囲が特約自体によって定まっている場合は問題がありません。例えば、テナントが新品の冷暖房機器・給湯器が設備された新築のビルに入居し、この設備についての修繕義務を負うことが特約上明記されていれば、これらの設備についての修繕義務はテナント側にあります。
しかし、テナント側の修繕義務の範囲が具体的に明示されていない場合には、通常テナント側が負担する修繕の範囲は小修繕ないしは通常生ずべき破損の修繕の範囲に限られると解するべきでしょう。
また、一般にテナントの専用で使用する部分についての修繕は、テナント側がするという特約が行われていることが多いと思いますけれども、ビルの躯体部分とか共用部分については、基本的に貸主側に修繕義務があるわけですから、いかに特約といえどもテナントにそれを負担させるということはできないということになります。
テナントが修繕をした場合の修繕費用についての支払いを貸主に請求してくるということがあります。必要費と有益費の二つに分けられていますが、必要費というのは、本来貸主が負担するべき、貸室を使用収益するうえにおいて必要不可欠な部分の修繕費用のことであり、テナント側は直ちに貸主に償還請求ができるということになっております。
これに対して有益費というのは、借主がもっぱら自分の都合で自己の使用の都合上有益な改良を施した場合です。必要費になるのはその建物、その賃借部分を使用するために必要不可欠な工事内容、例えば基本的な雨漏りを防ぐとかの修繕ですけれども、有益費の場合は、例えば冷暖房効率を上げるためによりよく改良をしたというような場合ですから、それによって建物自体の価値が上がるということになる場合、その分を契約の終了時に建物自体の価値が増加した限度で、その改良に応じた有益費の支払いを貸主に請求できるということになっています。

テナントの改装・模様替えは、テナント側の都合による改装・模様替えということですから、それを認めるのか認めないのかということについては、基本的に契約内容でどう定めているかによります。実務上も、改装・模様替えについての契約内容は、用途が店舗の場合と事務所の場合でかなり違います。店舗の場合には、かなり必要度が高いということで認められる範囲も一般に広くなってはいますが、用途の変更になるような改装・模様替えは、当然貸主の承諾が必要になるわけです。
したがって、トラブル防止という観点からは賃貸建物の用途をなるべく具体的に定めておくことが望ましいといえます。例えば、店舗として貸すという場合であっても、単に用途を店舗とするのではなく、具体的に何を目的とする店舗なのかということを明確に定めておかないと、勝手に用途変更したということにはならないわけです。飲食店といっても幅広いわけですし、具体的にどういったお店をやるのかということを確認したうえで、用途を具体的に定めておくということが必要になってきます。
そして、その用途変更になる程度の改装・模様替えであるのか、ないのかによって当然その後の対応も違ってきますし、場合によって契約違反ということになるわけですから、その対応が必要になっております。

バブル崩壊後の不況、地価下落を反映して、テナントから賃料の減額請求を受けるケースが多くなっています。特にサブリースに関連してサブリース会社からの賃料減額請求が認められているケース、あるいは賃料の減額請求が認められていないケースなどの裁判例が注目されています。
建物賃料の減額請求というのは借地借家法32条に規定がありまして、一定の要件に該当すれば賃料減額請求を通知することによって、すなわち賃借人側からの一方的意思表示によって、賃料の減額ができるというものです。建物賃料が土地もしくは建物に対する租税その他の負担の減少、土地もしくは建物の価格の低下その他の経済事情の変動により、または近傍同種の建物賃料に比較して不相当となったなどを根拠として、テナント側は内容証明郵便で賃料の減額を請求し、あわせて、賃料を減額請求した金額まで減額して送金してくることが多いと思います。
これに対して、貸主側としてどういう対応をするのかが問題となります。例えば、今現在の賃料が月額100万円としますと、従前は100万円払ってきたものを、近隣の相場からして著しい乖離があるという理由で、テナントから来月から50万に減額してくれという通知が来て、50万の送金しかなかった場合です。ビルオーナーは、一方的に50万円に減額された賃料を甘んじて受け取り、あとは調停での話し合いか、テナントが提訴してくるであろう賃料減額の裁判を待つしかないのか、別の対抗手段がありうるのか、という問題です。
ビルオーナーとしては、テナント側の求める賃料減額を認める裁判が確定するまでは、貸主自らが相当と認める額の賃料請求ができることになっています。したがって、テナント側が50万円に減額するといって50万円しか払わない場合には、ビルオーナーは、その裁判がまだ確定してないわけだから、確定するまでは自ら相当と認める額は支払えということを請求してよいということになっています。
だから貸主が賃料の減額は認めるとして、金額的には月額90万円が限度だと判断すれば、貸主として相当と認める額は90万円である、だから裁判が確定するまでは90万円を支払えと請求することができます。また、現行の100万円の賃料の減額をする理由は全くない、従前どおりでいいんだと判断するのであれば、少なくとも賃料減額の裁判が確定するまでは、貸主が相当と認める額は100万円であるから、従前どおりの金額の支払いを請求できます。これにより、一方的にテナント側の減額請求に対して対抗することができます。
ただし、最終的に賃料減額の裁判が確定したら、裁判で認められた額との差額を清算する必要があります。仮に判決で月額80万円が相当な賃料と認められたとすれば、ビルオーナーが月額100万円を請求していた場合は、賃料減額請求がなされた時から裁判確定時まで月額20万円分の差額を清算しなければなりません。差額清算に際して注意を要するのは、その差額分に対して年10パーセントの金利を付加して清算する必要があることです。この金利は借地借家法で定められているのですが、現在の金利水準に比較して極めて高いのです。年1割の金利で差額清算すると、減額請求時から裁判確定時までの間の合計額はかなりの金額になってしまいます。
ところでその賃料減額請求の事案で、注目されるのはサブリース取引の場合です。すなわち、ビルオーナーがそのビル1棟を転貸条件付きでサブリース業者に賃貸し、賃借したサブリース業者がテナントを募集し転貸するという取引形態です。このようなサブリース取引は、ビルオーナーにとってもテナントが現実に入居するか否かにかかわらず、ビル一棟の賃料収入が確保できるというメリットがあり、一時期かなり盛んに行われました。ビルオーナーとサブリース業者との賃貸借契約期間が比較的長期に設定されていることからも、ビルオーナー側は長期にわたる安定収入を期待できたわけです。他方、サブリース業者は一棟借りをすることにより支払う賃料水準を低く抑えることができ、転貸賃料との差額が収益となるわけです。
ところが、バブル崩壊後、サブリース業者がビルオーナー側に支払う賃料と、実際に入居しているテナントから受け取る転貸賃料との間で、逆ざや現象が起きてきました。すなわち、ビルオーナーとの契約書上はバブル期の高い賃料水準で契約したにもかかわらず、入居するテナントからの賃料相場$,2<$,$j!"5U$6$d$NIiC4$KBQ$($+$M$?%5%V%j!<%96H
ただ、このサブリース契約というのが普通の建物賃貸借契約と同視していいのか、借地借家法32条に基づく賃料減額請求が認められるのかというところが争いになっております。すなわち、サブリース契約というのは一般の建物賃貸借契約とは異なり、一種の事業を共同でやる、事業を委託するというような意味合いが非常に強いので、一般的な賃貸借契約の規定に適用される借地借家法32条を適用することは認めないという裁判例もあります。他方、形式上賃貸借契約である以上は賃料減額請求ができるという裁判例もあります。
本日は比較的最近の裁判例をご紹介しようと思います。大手の業者がサブリースしている物件についてなんですけども、一審の東京地裁(平成13年6月20日判例時報1774号63頁)は、借地借家法32条による減額請求権は行使できるとしたうえで、サブリース業者の賃料減額請求は借地借家法所定の要件を満たしておらず不適法であるとして、サブリース業者の請求を棄却しました。
このケースにおいては、サブリース契約でサブリース業者側が賃料の保証をしている、それはこの貸主であるビルオーナー側がこのサブリース事業に参画するうえにおいて銀行からの借り入れをして、そ$7$F!"0ll$H$N4XO"@-$,$=$b$=$b$J$$!"%S%k%*!<%J!<$b6d9T$+$i$Nl$H$$$&$3$H$,DBNA?e=`$NA0Ds$H$J$C$F$$$J$$$N$@$+$i!"6aNYAj>l$,2<$,$C$?$H$$$C$F$b!"$=$l$r:,5r$K$3$NJ*7o$K$D$$$F$NDBNA8:3[$OG'$a$J$$$H$$$&M}M3$G%5%V%j!<%96H!AJ$7$?;v7o$G$9!#
この判決については控訴され、東京高等裁判所で平成14年3月5日に判決が言い渡され(判例時報1776号71頁)、再びサブリース業者側が敗訴しました。その敗訴理由がちょっと変わっているので、この機会にご紹介します。
高裁判決は、ビルオーナーとサブリース業者とのサブリース契約において、もし両者の契約が解除された場合でも、現在入っているテナントとの賃貸借契約に関しては、ビルオーナーが責任を持って現在のテナントの入居は保証するということになっている、なぜならば、サブリース業者のほうがこの契約から撤退した場合に転借人すなわち現テナントがその建物が利用できないということになってくると、それはサブリース業者が非常に重い責任を現テナントに負わなくてはいけないから、もしも仮にビルオーナーとサブリース業者との契約が解除された場合は、ビルオーナーは責任を持って現在のテナントの入居を保証し、ビルオーナーと現テナントとの直接の契約に切り替えるひとになっていることに注目しています。
そして、ビルオーナーが、サブリース業者との契約が解除された場合は、現在入居しているテナントの入居を引き続いて保証して直接契約に切り替えるというような場合は、それは取りも直さず、ビルオーナーとサブリース業者との契約は、双方ともに自由に契約を解除できるということと同じだ、すなわちビルオーナー側が契約を解除する場合は、一般に正当な理由がないと契約を終了させることができないのだけれども、現在のテナントをそのまま責任を持って引き継ぐということは正当理由が要らない、解除する自由があるということだ、ということは、サブリース業者のほうから賃料減額請求がなされ、仮に裁判所が賃料の減額を認めた場合には、ビルオーナーはサブリース業者との契約を解除してしまえばいい、そうすれば賃料が減額されたら、もともとのその契約自体を自由に解除することができるのだから、サブリース業者との契約を終了させることができる。そういうふうになるんだから、逆にサブリース業者側からの賃料減額請求を認める意味はない、判決でもって賃料減額請求を認めたとしても、もともとの契約自体が終了してしまうのであれば判断する必要がない、だから賃料減額請求は認めないという結論を出しております。
いろんな裁判例がありますが、今現在の状況としてはサブリース業者側からの賃料減額請求を認めた事案と、サブリース業者側の賃料減額請求を認めない事案と両方あります。
一般の賃貸借と同視できるサブリースの場合は賃料減額請求が比較的に認められていますし、サブリース事業をするうえにおいて、サブリース業者がかなり主導的に、ビルオーナー側を巻き込んで、あるいは銀行からの融資を受けて建築させて、そして銀行への返済もサブリースの賃料を前提とした返済計画を全部組み込んで事業計画、収益見通しも全部立てるという形で一種の共同事業としてやってきている場合は、サブリース側からの賃料減額請求が否定されているケースが多いように思います。

賃料の減額請求と同様の理由でテナント側から保証金の減額、保証金の一部返還を請求されるケースも起きています。テナント側とすれば契約当時に差し入れた保証金の水準が高すぎる、現在の相場が下がっているのだから一部でも返してほしいという考えと、最近ビル経営をしている企業の倒産が報じられ、テナントが差し入れてある保証金返還請求債権の回収ができなくなっているというテナント側の危機感の表れが保証金の減額請求ということに結びついているように思います。この点については、法的な結論は比較的単純です。賃料減額請求については借地借家法に根拠となる条文がありますが、保証金の減額、一部返還については条文上の根拠がありません。
したがって、テナント側は賃貸借契約書に特約事項として定めがあれば、この特約に基づき返還請求が可能ですが、このような特約事項を入れて契約している例というのは見たことがありません。法律上も、契約書上も根拠のない請求は認められないという結論です。
ただ、前編でもお話ししましたとおり(「いしずえ」114号16頁参照)、ビル経営オーナー側企業の倒産が起きた場合に入居しているテナントが差し入れた保証金の確保の問題が生じております。法的な解釈については前編でお話ししていますが、この問題は法的な結論を出せば済むということではない側面があります。
すなわち、テナント側も入居にあたってビルオーナーの資力、経営状況のチェックをする必要を認識することになりますし、ビルオーナーとしてもテナントの確保という面を考慮すれば、テナントの要求を受け入れることを考えざるを得ない状況に追い込まれております。このため、建物賃貸借契約の更新に際して、保証金の減額、一部返還を実施している例も見られます。ビルオーナーとテナントの経済的な力関係に変動が起きていることによるものだと思います。

建物賃貸借契約では契約の有効期間を定めるのが一般的です。事務所・店舗のテナント契約は2〜3年の契約期間のものが大半です。契約期間を定めるということは原則として契約期間中に一方的に自己都合での解約をすることができないということになります。しかし、テナント側からの契約期間内の解約を認めるという特約は有効な特約として認められています。
期間内解約の手続き、効果についても原則として自由に決められることになります。期間内解約する場合においても解約申入れから契約終了までの期間、すなわち予告期間を定めておくことも有効です。解約予告期間をどの程度にするかということについても原則として自由に定められますが、不当に賃借人の解約の自由を制限する条項は無効とされています。例えば、賃借人からの期間内解約の予告期間を長くしたり、解約に伴い違約金の支払義務があるとするような定めをした場合です。
民法617条により期間の定めのない建物賃貸借契約における解約申し入れは3カ月経過後に契約終了の効果が発生することになりますが、賃借人から期間内解約できるとの特約は賃借人に有利な特約事項であり、借地借家法による制約もありませんから3カ月よりも短くする特約は有効です。しかし、逆に不当に長い予告期間を定めたり(6カ月程度までが許容される限度でしょうか)、公序良俗に反する重い違約金を定めたり、保証金の償却を過大にすることは無効とされる余地があると思います。

賃貸借契約の更新は、ビルオーナーとしても神経を使います。以前は契約更新を当然の前提として更新料の請求がなされ、更新後の賃料は増額されるのが一般的でした。しかし、昨今の経済状況ではビルオーナーが契約更新時に強気の条件を提示すれば、テナントは他のビルに移ってしまう危険性があります。このため、更新料についても以前のように何カ月分が相当か、というレベルではなく、ビルオーナー側からあえて契約更新を持ち出さず、法定更新とすることにより賃料の据え置きを図っているケースもあるぐらいです。
法定更新とは、借地借家法26条に規定されているとおり、建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知、または条件を変更しなければ更新しない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなすというものです。ただし、この法定更新がされたあとの賃貸借期間は定めがないものとなります。このため契約更新を持ち出せば、テナント側から賃料の減額を求められることにつながる可能性があるため、ビルオーナーが契約更新時の対応に苦慮しているわけです。
更新料の位置づけについても法律的には明確ではありません。借地借家法に基づいて認められている権利ではなくして、当事者間の契約において更新料支払いの特約がある場合にのみ請求できるものにすぎないからです。このため賃貸借契約書に更新料支払い特約がなければ、次回更新時に更新料の請求をすることは困難です。
従前の賃貸借契約書に更新料支払いの特約がある場合であっても、合意更新ではなく法定更新となった場合に、この特約に基づき更新料の請求ができるか否かについては、肯定するもの(東京地裁平成10年3月10日判例タイムズ1009号264頁)と否定するもの(東京地裁平成12年9月8日)と二通りの裁判例があります。

建物賃貸借契約の終了に伴う原状回復の問題には、実務の感覚と法律的な責任の範囲というのが必ずしも一致していない面が見られます。要するに、法律上の原状回復は、借主がその建物の引渡しを受けた時の状態に戻す、建物の引渡しを受けたのちに借主の都合で付設した物件や設備を撤去する、あるいは、借主の責めに帰すべき事由、すなわち借主側の何らかの故意もしくは過失で建物を破損した場合に破損個所を補修し旧の状態に戻す、ということが原状回復義務の範囲です。
不動産取引業界でいわれる「自然の損耗」については、その建物の本来の用法に従って通常の使用をしたことにより建物や附属設備が損耗することについては、その部分を借主が入居当時の状態に戻す、すなわち天井、床の張替え、壁紙の張替えまでして入居時と同じ状態にまで戻すということを求めることはできない、というのが法律解釈上の原状回復の範囲です。
ところが実務では、ビルオーナー側の認識は原状回復というのは入居したときの状態に戻す、テナント入居の時点に天井、床、壁紙を新調して入居させたんだから、明渡し時点ではその入居したときのきれいな状態に戻すのがいわゆる原状回復であるとの認識を持っておられる方が多く、このことから原状回復の範囲をめぐって貸主・借主間のトラブルとなる例があります。
しかし、法的な争いとなった事案において、自然の損耗による部分については原状回復の範囲に含めない解釈が一般的ですし、その理由として賃借人が通常使用することによって生ずる建物の損耗、汚損の修復費は、解約時の保証金の償却費の中に含まれる等が挙げられております。

テナントが賃料の支払いもせず突然所在不明となって連絡もつかないケースは、ビルオーナーとしては大変困惑する一例です。ビルオーナーとしては速やかに貸室内を整理したいところですが、テナントの家財や備品などの処理に困るところです。このような場合に備えて、賃貸借契約書に自力救済条項を特約として定めておくことは法的効力があるのでしょうか。
具体的なケースをご紹介しますと、マンション賃貸の例ですが、賃貸借契約書に「賃借人が賃料の支払を7日以上怠ったときは賃貸人は直ちに賃貸物件の施錠をすることができる。またその後7日以上経過したときは賃貸物件内にある動産を賃借人の費用負担において賃貸人が自由に処分しても賃借人は異議の申立てをしないものとする」との自力救済条項に基づき管理会社従業員が室内に立ち入ったり、貸室の錠を取り替えさせたことが不法行為になるかどうかが争われたケースがあります。
裁判所は、「この特約は賃貸人側が自己の権利(賃料債権)を実現するため法的手段によらずに通常の権利行使の範囲を超えて賃借人の平穏に生活する権利を侵害することを内容とするものであり、このような手段による権利の実現は近代国家にあっては法的手続きによったのでは権利の実現が不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合を除くほか原則として許されない。この特約はそのような特別の事情がない場合に適用される限りにおいて公序良俗に反し無効である」として管理会社の行為は違法であると判断しました(札幌地裁平成11年12月24日判例時報1725号160頁)。
ほかにも賃貸借契約上の自力救済条項に基づき、賃貸人が賃借人の家財を廃棄処分にしたことが違法であるとされた事例もあります(浦和地裁平成6年4月22日判例タイムズ874号231頁)。
したがって、ビルオーナーとしては時間と費用がかかっても賃貸借契約の解除通知を出し(通常の方法で送達できない場合には公示送達)、貸室内に放置された備品などについても正当な権利に基づく引取人がいないのであれば、差押えの手続きをとる必要があります。

近時はビルが売却される事例も多く、一般にオーナーがチェンジするという言い方がされておりますが、テナントが入居しているビル自体を売却して新しいオーナーに変更する場合に、テナントがすでに前のオーナーに差し入れた敷金・保証金の返還債務が新しいオーナーに当然に引き継がれるかどうかという問題があります。
この点については、裁判例によると敷金と保証金でその扱いが異なっております。敷金は、あくまでも賃貸借契約の一内容となっているものであって、賃貸借契約上の貸主の地位が変更することによって、当然に新しい貸主に引き継がれるとされております。敷金はもともと賃料の担保、あるいは原状回復義務の担保として、借主から貸主に差し入れられているものであり、賃貸借契約の内容そのものであるという理由です。
これに対して保証金については、その法的な意味づけについてさまざまな見解があります。保証金と称する場合でも敷金的な色彩が非常に強い場合もありますし、他方、一種の貸付金、すなわち借主が入居するにあたって、貸主に対して金銭を貸し付けるというような意味合いで支払われるものであって、賃貸借契約そのものの一部ではないとされる場合もあります。現在はあまりいわれておりませんが、以前は建設協力金という意味合いをもって、テナントが貸主に交付する金銭といわれていたこともありました。保証金については必ずしもその意味合いが敷金ほど明確ではありません。
したがって保証金については、敷金のように当然に新しいオーナーに承継されるということではないといわれています。敷金的な色彩の強い保証金について承継を認めた裁判例もありますが、多くの裁判例は保証金については承継を認めておりません。
昨今の不動産取引実務では、保証金の位置づけを明確にするわけでもなく、取引慣行のひとつとして敷金と格別区別することなく契約書に定められていますし、金額的にも敷金と大きく隔たる金額でもなく同程度で、単なる預かり金としての位置づけで保証金と表示している場合もあります。
だからこそ、ビルオーナーとしては、ビルの売買をする場合には、新しい貸主となる買主との売買契約書において、保証金の承継をどうするかということを必ず明記しておかなければなりません。保証金の返還を新オーナーに承継させるのであれば、売買契約締結と同時にテナントに対してもその旨通知しておく必要があります。
ところで、ビルのオーナーチェンジに伴って、従前の賃貸借契約と新しいビルオーナーとテナントとの賃貸借契約の関係が問題となることがあります。具体的な問題としては、契約期間はどうなるのかとか、新オーナーがテナントに対して新たに保証金を差し入れるよう要求する例などがあります。
しかし、オーナーチェンジは契約上の地位の移転であり、建物賃貸借契約上の貸主の地位が新貸主に移転したとしても、賃貸借契約は従前の契約との同一性を保っていると考えられます。もちろん、新オーナーとテナントが新規に賃貸借契約を締結することに合意すれば、従前の賃貸借契約とはまったく別個の新規契Ls$H$9$k$3$H$b2DG=$G$9!#
従前の賃貸借契約が引き続き効力があり、契約上の貸主の地位が移転したものであれば、新オーナーが賃貸借契約期間中に一方的な保証金の追加差入れを要求できる法的根拠はありません。また、従前の賃貸借契約における貸主が変更したからといってその契約が終了するわけではありませんので、当事者間で従前の契約期間を変更するという新たな合意がない限り、従前の契約期間を引き継ぐことになります。
ビルのオーナーがチェンジした場合の手続きとしては、新旧のオーナーからテナントに対してオーナーチェンジの通知をしたうえで、新オーナーが各テナントと新たな賃貸借契約書を締結したり、覚書を取り交わして従前の契約との関係を明確にしておくことが必要です。

ビル経営をめぐって近時多く見られるリスク・トラブル発生の原因は、昨今の経済不況に起因することが多いことは否定できません。しかし、この点はビル経営だけに限ったことではありません。他の業種においても経済不況の波を受けていることは同様です。
弁護士の立場でビル経営特有の%j%9%/!&%H%i%V%k$N860x$r9M$($k$H!"K!N'$N@0Hw$,CY$l$F$$$k$3$H$KBg$-$J860x$,$"$k$h$&$K;W$o$l$^$9!#%S%k7P1D$O!"%S%k$r=jM-$7%S%k$rDBB_$9$k$3$H$K$h$C$F<}1W$r>e$2$k$N$,;v6H$NFbMF$G$9$,!"$=$N.%S%k$G$OF~5o$9$k%F%J%s%H$N6Hl9g$HE9J^$H$7$F;HMQ$9$k>l9g$G$O$=$N;HMQJ}K!!"7@Ls>r7o$O$*$N$:$H0[$J$j$^$9!#
したがって、ビル経営に内在するリスク、予想されるトラブルへの対応をするためには、ビル経営に適した法整備が必要になりますが、現行法ではわずかに民法、借地借家法が整備されているにすぎません。しかも民法の賃貸借に関する規定、借地借家法はその成立当時からの経緯もあり、居住を目的とする賃貸借を想定して設けられている規定が多く、事務所・店舗を目的とするテナントビルの賃貸借に必要な条項は必ずしも整備されておりません。
また、他の業種では、標準約款により、事業者の権利義務を公正に定められている場合もあり、事業者は標準約款を利用することにより契約トラブルを回避することも可能となっています。しかし、ビル経営の業界にはかかる標準約款は存在しません。
このため、ビル経営をする事業者は、自らのビルの特性に合わせた賃貸借契約を締結することが必要不可欠です。各々のビル経営者が、自らのビルの特性に合わせた契約条項、特約条項を整備することによって当該ビルの賃貸借において起こりうるリスク・トラブルを予測し、日頃のビル管理(テナント管理)を適切にすることによって、かかる事態の発生を未然に回避することが可能となります。ところが残念なことに、ビル経営の業界においては契約書の持つ重要な意義についての認識が希薄で安易に作成し、想定外のリスク・トラブルの発生に右往左往している現状にあるように思われます。
ビル経営事業者各位、ビル管理業務に携わっている事業者各位におかれては、今一度自らの賃貸借契約書をチェックし、今後の事業経営のために不足している条項がないかという観点からの再検討を切望する次第です。
(文責/日本ビルヂング経営センター)